【環境】国立公園がメンタルヘルスに与える影響の価値評価
Nature Communications
2019年11月13日
国立公園によって訪問者のメンタルヘルスが改善されることの経済的価値が、世界全体で年間約6兆ドル(約660兆円)に達するという推定結果を報告するPerspectiveが、Nature Communicationsで掲載される。この知見は、予備的研究での計算に基づいたものであり、この推定値を精緻化するには、より詳細な分析が必要となる。
メンタルヘルスが損なわれていることの経済的コストには、治療、ケア、職場の生産性低下などがある。一方、自然の中で時間を過ごすことによって得られる健康に関連した恩恵としては、注意力、認知力と睡眠の向上、ストレスからの回復などがあると考えられているが、国立公園が訪問者のメンタルヘルスに与える影響の経済的価値は明らかになっていない。
今回、Ralf Buckleyたちの研究グループは、国立公園がもたらす健康増進サービスの価値算定に取り組んだ。Buckleyたちは、人間が苦痛や精神障害なしに日常生活動作を行う能力を測定する「質調整生存年」という概念を用いて、オーストラリアのクイーンズランド州とビクトリア州の代表サンプル集団(1万9674人)から収集したデータを使って、国立公園の経済的価値を推定し、このデータを用いて、オーストラリア全体と世界全体での経済的価値も推定した。その結果、保護区を訪問することと訪問者のメンタルヘルスとの間に直接的な関連があることが判明した。オーストラリアの場合、国立公園の健康増進サービスの価値が年間約1000億ドル(約11兆円)と推定された。そして、オーストラリアでメンタルヘルスが損なわれていることの経済的コストは現在、GDPの約10%に相当しており、保護区がない場合には、この経済的コストが7.5%増える可能性があると推定している。
doi:10.1038/s41467-019-12631-6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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