【天体物理学】ガンマ線バーストによる非常に高エネルギーの光子の放出
Nature
2019年11月21日
激しい爆発であるガンマ線バーストに関して、これまでに報告された中で最も高エネルギーの光子が放出されたことが、2つのガンマ線バーストの観測によって明らかになった。この新知見は、今週、Natureに掲載される3編の論文に示されており、こうした高エネルギー現象を引き起こすプロセスを解明する手掛かりになると考えられる。
ガンマ線バーストは、宇宙で最も高エネルギーの爆発現象と考えられており、中性子星またはブラックホールの形成が原因と考えられている。最初は明るい閃光で始まり、その後「残光」期間が続き、電波からギガ電子ボルトのガンマ線まで、さまざまなエネルギーの電磁波が放射される。非常に高エネルギー(100ギガ電子ボルト超)の放射の原因については、観測例が少ないため、解明が進んでいない。
これら3編の論文では、2つのガンマ線バースト(GRB190114CとGRB180720B)から100ギガ電子ボルトを超える放射が検出されたことが報告されている。2019年1月に発見されたGRB190114Cは、ガンマ線バーストの約1分後から0.2~1テラ電子ボルトという非常に高エネルギーの光子を放出することが分かった。Razmik Mirzoyanたちの2編の論文では、複数の望遠鏡からのデータを解析して、この光子の放出の原因となる機構を特定しようとした研究について記述されている。Mirzoyanたちは、光子が電子によって散乱され、光子のエネルギーが増加するというプロセス(逆コンプトン散乱)だと考えている。一方、Edna Ruiz-Velascoの論文では、2018年7月に最初に検出されたGRB180720Bによる最初の放射から10時間後の残光に100~440ギガ電子ボルトのエネルギーを持つ光子が観測されたことが報告されている。Ruiz-Velascoたちもこの観測結果が逆コンプトン散乱に起因すると考えている。
同時掲載のBing ZhangのNews & Viewsでは、これらの新知見が、高エネルギー爆発を検出するための望遠鏡では発見しにくいガンマ線バースト観測全般の研究と、この現象の原因となる機構を解明する取り組みの両方にとっての勝利を意味すると説明している。Zhangによれば、今後、高エネルギーのガンマ線バースト放射の観測例が増えることが予想され、それによって「研究者が発掘しようとしている宝物」が明らかになる可能性があるという。
doi:10.1038/s41586-019-1754-6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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