出生前のアンドロゲン曝露は多嚢胞性卵巣症候群のリスクにつながる
Nature Medicine
2019年12月3日
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)に罹患している女性から生まれた娘は、PCOSを発症するリスクが5倍に上昇していることが明らかになった。
PCOSの患者数は生殖可能年齢の女性の17%に達している。この疾患は受精率の低下や2型糖尿病、また不規則な月経周期のような健康に有害な事象に関連していて、その全てが肥満によってさらに悪化する。PCOSの罹患率は高く、女性の健康に対する影響も深刻だが、その原因やリスク因子はほとんど明らかになっていない。これまでの研究から、遺伝学だけではPCOSの遺伝率の最大でも10%程度しか説明できないと考えられている。
E Stener-Victorinたちは、PCOSを発症したスウェーデン女性の診療記録を解析し、またチリで行われた症例対照研究からPCOS患者とその娘からなるコホートを追跡した。PCOSを発症したスウェーデン女性とチリ女性の両方で、その娘がPCOSと診断される確率が通常の5倍に上昇していることが分かった。こうした影響の原因をさらに調べるために、著者たちはマウスを使って研究を行い、ヒトで観察されたような世代間で伝達される影響の原因となっているのは、妊娠中の肥満ではなく、出生前のアンドロゲン曝露であることを明らかにした。また、この影響は複数世代にわたって存続し、最大で3世代にわたって受け継がれることも示された。
これらの知見によって、PCOSという不均一な疾患が持つ複雑性の一部が解明され、これからの世代の女性でのPCOS罹患を防ぐ研究を進めるための基盤が得られた。
doi:10.1038/s41591-019-0666-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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