【環境】韓国のソウルを流れる水路で測定されたリチウムの濃度
Nature Communications
2019年12月4日
電子機器やバッテリーに由来するリチウムが、ソウル(韓国)の河川に流入し、水道水を汚染している可能性のあることを示唆する論文が今週掲載される。今回の研究結果は、水路のリチウム濃度が人口密度と相関し、汚水処理施設がリチウムの除去に効果がないと考えられることを示唆している。
携帯電話と電気自動車が普及し、需要が生まれているため、リチウムの使用量が増加している。また、今後もリチウムの需要が増加することが予想されているが、廃棄されたリチウムの処理ガイドラインは非常に少なく、リチウムの製造と廃棄が環境と人間の健康に及ぼす悪影響についての知識もほとんど得られていない。
今回、Jong-Sik Ryuたちの研究グループは、韓国最大の都市ソウルの主たる水道水源である漢江流域でサンプリング調査を実施し、漢江上流のリチウム濃度が世界の他の河川より低いことを見いだした。しかし、漢江が都市部に入り、流域の人口密度が上昇すると、リチウム濃度は上流域の最大600%に達したことが判明した。Ryuたちは、この濃度の変化の原因が人為的活動だと考えており、水道水試料のリチウム濃度についても流域の人口密度の上昇に伴って同じ傾向が観察された。また、水道水試料のリチウム同位体組成を分析した結果、漢江に流入したリチウムが、リチウムイオン電池、治療薬、食品廃棄物に由来するものであることが判明した。
Ryuたちは、リチウムに関連した生態系と人間の健康に対する影響について、モニタリングの質を高め、リスクの高い地域を特定し、影響全体を最小限に抑えることが必要であることが今回の研究で明らかになったと主張している。
doi:10.1038/s41467-019-13376-y
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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