【社会】米国における「逆人種差別」の認識
Nature Human Behaviour
2019年12月10日
米国人は一般に、黒人に対する人種差別の減少が白人に対する偏見の増加につながると考えていないことを報告する論文が掲載される。今回の研究から、黒人と白人の双方の米国人について差別が経時的に減少していることをが示された。しかし、黒人と白人の間に見られる、差別に関するギャップの大きさに対する認識は、人種や支持政党によって異なっていた。
西洋諸国に広がる政治的分極化と極右的な運動の高まりの一因は、非白人を優遇しているとされる社会において白人が差別に直面しているという考えにあると考えられている。最近の実験的研究で、一部の白人米国人は、黒人に対する差別の減少が白人に対する差別の高まりを伴っていると考えていることが示唆された(ある種のゼロ・サム思考)。しかしながら、これまでの研究は小規模で、米国民の代表するものではなく、こうしたゼロ・サム的考えがどれほど広まっているかは不明であった。
Megan EarleとGordon Hodsonの研究チームは今回、米国全体を対象とした4つの大規模なデータセットを解析することで、さまざまな集団によって報告された差別の実際の程度と、そうした経験に対する認識の両方について評価した。その結果、どの集団も、黒人米国人は白人米国人より大きな差別を経験していると認識しており、また回答者は全般的に、差別が逆転していると考えていないことが分かった。しかしながら、2つの集団が経験した差別のギャップの大きさに関する考えは、集団によって異なっていた。白人の回答者および共和党支持者は、差別の程度の差は、黒人の回答者および民主党支持者より小さいと考えていた。白人の回答者、共和党支持者、白人の共和党支持者はまた、差別の個人的な経験に基づいて実際に報告されているよりもギャップは小さいと捉えていた。
今回の研究は、「逆人種差別」という考えが、過去に報告されたほど広がっているわけではないものの、人種および支持政党が、米国内の異なる集団が直面する差別の程度に対する認識の差に部分的に関連することを示唆している。
doi:10.1038/s41562-019-0777-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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