Research Press Release
【材料】軟体動物の被甲から着想して作られた柔軟な防具
Nature Communications
2019年12月11日
海洋性軟体動物のヒザラガイの肉帯のすその部分から発想を得て作られた新しいタイプの柔軟な防具について報告する論文が、今週掲載される。
これまで生物学によって着想を得て、さまざまな防具が作られてきたが、防具を開発する際には、その柔軟性が懸念事項であることは、昔も今も変わっていない。ヒザラガイの背中には、体を守る大きな殻板のあることが知られているが、殻板に覆われていない部分を保護する石灰化した鱗も配列されている。
今回、Ling Liたちの研究チームは、ヒザラガイがどのような進化を遂げて、可動域を維持しつつ、攻撃から身を守れるようになったのかを調べた。そして、数々の技術を用いて、さまざまなヒザラガイ種の石灰化した鱗の構造と機能を探究した。次にLiたちは、合成高分子製の防具を設計し、3Dプリンターで作製して、この鱗の構造と機能の分析をさらに続けた。また、Liたちは、3Dプリンターで作製した柔軟な防具を膝当てにすることで、割れたガラスからの保護に利用できることを実証した。
今回開発された防具はプラスチック製だが、3Dプリンターがさまざまな材料に対応しているため、今回の研究によって開発された設計原理が、新たな機能を果たす試作品の設計に結び付く可能性がある。
doi:10.1038/s41467-019-13215-0
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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