【神経科学】確証バイアスの形成に関係する脳領域
Nature Neuroscience
2019年12月17日
後内側前頭前野(pMFC)という脳領域が、ヒトの確証バイアスに寄与しているという研究知見を報告した論文が掲載される。他人の意見の説得力に対するpMFCの神経感受性が、自分の信念に対する反証となる意見で低くなるというのだ。
人間は、過去に自らが行った選択や判断にとって不利な情報を過小評価する傾向がある。これは、確証バイアスといい、政治から科学、教育に至る、あらゆる事柄に重大な影響を及ぼし、信念形成の1つの特性となっているが、その基盤となる機構は、ほとんど解明されていない。今回、Andreas Kappes、Tali Sharotたちの研究グループは、確証バイアスが形成されるプロセスがpMFCで起こるのではないかという仮説を立てた。pMFCは、意思決定に関する情報の追跡を行い、一旦下した決定を変更すべき時に信号を送るという機能がある。
今回の研究では、参加者(42人の成人)を2人1組にして、数々の不動産物件について、その市場価格が画面上に表示された価格より高いか安いかをそれぞれの参加者に判定させ、その判定にどれほど自信があるのかに応じて1から60セントの範囲で賭け金を設定させた。次に、参加者をMRIスキャナーに入れ、上記の不動産物件を再び見せて、当初の判定内容と賭け金の額を示したうえで、ペアの相手の判定内容と賭け金を示して、自分の賭け金の額を最終決定させて、自分の当初の判定にどの程度の自信があるのかを示させた。
その結果、参加者は、その当初の判定がペアの相手の判定によって裏付けられると、賭け金を増額して最終決定し、参加者が最終決定した賭け金とペアの相手の賭け金が相関していた。また、Kappesたちは、ペアの相手の判定が参加者の当初の判定に影響を及ぼすことにpMFCの活動が関係しているが、それが参加者とペアの相手の判定が一致した場合に限られることを確認した。
以上の結果は、他人の意見の説得力に対するpMFCの感受性が生じるのは意見が一致する場合のみであり、意見が一致しない場合には感受性が低下して、確証バイアスに寄与する可能性のあることを示唆している。
doi:10.1038/s41593-019-0549-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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