【気候科学】南極オゾンホールの回復の遅れを評価する
Nature Communications
2019年12月20日
最近になってトリクロロフルオロメタン(CFC-11)の排出量が増加していることが判明したが、このほど実施されたモデル研究で、この排出量増加が続くようであれば、南極オゾンホールの回復が10年以上遅れる可能性のあることが示唆された。CFC-11の排出量とその変動可能性に関しては不確実な点があるが、CFC-11の排出を迅速に停止できれば、回復の遅れが数年にとどまる可能性があるとされる。この研究成果を報告する論文が掲載される。
CFC-11は、成層圏に輸送される人為起源の塩素の約4分の1に寄与しており、CFC-11の生産量は、1987年のモントリオール議定書によって規制されている。モントリオール議定書の運用開始後、南極オゾンホールが、オゾン層破壊が起こる前の1980年の水準に回復するのは、21世紀後半の早い時期になるという予想が発表されたが、2018年になって、2000年代半ば以降のCFC-11の排出量が予想されたほど減少していないとする研究報告があった。これは、発泡体に使用するCFC-11の中国国内の無報告生産による排出量に関連している可能性が高い。
今回、Martyn Chipperfieldたちの研究グループは、詳細な大気化学輸送モデルを用いて、CFC-11排出量の増加が極域のオゾン層の回復にどのような影響を及ぼすのかを調べた。Chipperfieldたちは、3つのCFC-11排出経路(排出が直ちに停止する、排出量が一定の水準で推移する、排出量が今後10年間に段階的に削減されてゼロになる)を検討した。このシミュレーションでは、オゾンホールへの影響がこれまでのところ限定的であることが示唆された。しかし、CFC-11排出量が一定の水準で推移すれば、オゾンが1980年当時の濃度に戻るのが約18年遅れる可能性があり、CFC-11排出量が今後10年間で段階的に削減されてゼロになれば、その遅れはせいぜい2年となる可能性が高い。
doi:10.1038/s41467-019-13717-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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