【気候変動】キツネザルのすみかが気候変動に脅かされている
Nature Climate Change
2019年12月24日
マダガスカルの代表種であるエリマキキツネザルの生息地の38~93%が、気候変動と森林伐採の結果として失われる可能性があることを報告する論文が掲載される。
世界の生物多様性の5%が存在するマダガスカルでは、気候変動、外来種の侵入、乱獲、生息地の消失と分断化など、主要な地球規模の重大な脅威が全て起こっている。マダガスカルに生息するキツネザル種は、全101種のうちの96%が絶滅危惧種に指定されており、世界で最も絶滅の危機に瀕した脊椎動物分類群の1つとなっている。エリマキキツネザルは、マダガスカルの熱帯雨林で繁殖する数々の植物種の種子を散布する唯一の動物種であるため、エリマキキツネザルの生態ニッチは、健全な熱帯雨林の生息地の表現として非常に適している。
今回、Andrea Baden、Toni Lyn Morelli、Adam Smithたちの研究グループは、気候変動と生息地の消失が、それぞれ単独で、あるいは両者が組み合わさって、マダガスカルの森林の長期的生存にどのように影響するのかを推定した。今回の研究では、厳格な保護(森林伐採が行われない)と緩やかな保護(森林伐採が行われることがある)という2つの森林保護条件下における2070年までの熱帯雨林の被覆率の変化をモデル化した。そして数十年間の研究成果が集積された結果、エリマキキツネザルに適した生息地が、2070年までに森林伐採を原因として29~59%減少し、気候変動を原因として14~75%減少し、両者を原因として38~95%減少する可能性のあることが明らかになった。
今回の研究結果は、マダガスカル東部の熱帯雨林の脆弱な状態を浮き彫りにしている。この生態系と住民は、気候変動と森林伐採によって脅かされている。Badenたちは、この生物多様性ホットスポットの持続性を確保するには、森林の厳格な保護が必要だと主張している。
doi:10.1038/s41558-019-0647-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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