【生態学】魚類の行動に対する海洋酸性化の影響を再評価する
Nature
2020年1月9日
二酸化炭素(CO2)濃度の上昇を原因とする海洋酸性化は、サンゴ礁魚類の重要な行動にわずかな影響しか及ぼさないという結論を示した論文が今週掲載される。この知見は、サンゴ礁魚類に対する海洋酸性化の影響を評価することを目指して複数年にわたって行われた複数種対象の研究プロジェクトの成果であり、先行研究に異議を唱えるものとなっている。
海洋酸性化は、21世紀末までに過去3000万年間に地球上で起こった酸性化のレベルを超えることが予想されており、海洋生態系の安定性に対する懸念を引き起こしている。
以前の研究では、海洋酸性化はサンゴ礁魚類の行動能力と感覚能力に影響を及ぼすことが示唆されているが、対象種と研究方法が類似した研究の間でも結果がばらついている。今回、Timothy Clark、Josefin Sundinたちの研究グループは、野生状態と水槽内の魚類種(6種、900個体以上)を対象とした3年間にわたる研究で、過去の研究報告の再現性を検証した。この研究では、捕食者の回避、活動レベル、行動的側性化(活動時に脳のいずれかの半球が優位に用いられていること)が検討され、このようなサンゴ礁魚類の重要な行動が酸性化の増大の影響を受けないことが判明した。
今回の研究で、先行研究と異なる結論が導き出された理由は、今回の研究の規模と適用範囲を先行研究と比較することで説明できるかもしれない。Clarkたちの研究グループは、今後の課題として、CO2濃度の上昇が魚類の行動に及ぼす影響に関する研究の再現性を調べることを推奨するとともに、大気中CO2濃度の上昇が、海洋温暖化と関連しており、このことが海産魚類に大きな影響を及ぼしている点を強調している。
doi:10.1038/s41586-019-1903-y
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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