公衆衛生:小児期の鉛曝露リスクと世帯所得が脳の成長に与える影響
Nature Medicine
2020年1月14日
小児期の鉛曝露に関連して起こる認知機能と脳成長の障害は、貧困によってさらに悪化する可能性があることが分かった。
小児期の鉛曝露は、たとえ低濃度であっても、認知機能や行動の発達に悪影響を及ぼすことが知られていて、その後の生活での低い社会経済的地位とも関連付けられている。しかし、小児期の社会経済的状態と鉛曝露、そして脳の成長への影響の間の関係は十分には解明されていなかった。
E Sowell、A Marshallたちのグループは、全米各地の9〜10歳の小児9712人について、脳の構造と認知テストのスコアとを評価した。次いで、ワシントン州保健局の鉛リスクスコアを使って、それぞれの子どもの居住経歴に基づいて鉛曝露量を推定した。また、低所得世帯の子どもは、高所得世帯の子どもに比べると、認知テストのスコアの平均が9%低いことが分かった。鉛曝露リスクが最も高い地域に住む低所得世帯の子どもは、同じ地域に住む高所得世帯の子どもに比べて、認知テストのスコアがさらに3.1%低くなることも明らかになった。また、鉛曝露リスクが高い低所得世帯の子どもは、社会経済的状況は同等だが鉛曝露リスクが低い地域に住む子どもと比べると、脳構造の成長の障害が多いことが分かった。
著者たちは、子どもの血中鉛濃度の直接測定はまだ行っておらず、鉛曝露リスクの数字は近似的なものであることを注記している。鉛曝露リスクが少しでも低下すれば、環境的により厳しい状況にある子どもたちに、より大きな恩恵がもたらされる可能性があると、著者たちは結論している。
doi:10.1038/s41591-019-0713-y
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