【地球科学】地球最古の衝突構造
Nature Communications
2020年1月22日
オーストラリアの西オーストラリア州に保存されている直径70 kmのヤラブッバ・クレーターが、2億年以上前の衝突構造であり、地球最古のものであることを示唆する証拠を詳細に記述した論文が掲載される。クレーター内にあった衝撃鉱物の地質学的な年代測定が行われ、この地点で22億2900万年前に隕石が衝突したことが明らかになった。
地球の表面はテクトニクスと浸食によって絶えず変化しているため、非常に古い衝突クレーターの同定が難しくなっている。これまでに20億年以上前の衝突噴出物がオーストラリアとアフリカの一部で発見されたことが報告され、年代測定が行われたが、それに対応する衝突クレーターの同定ができなかった。このヤラブッバの衝突構造は、地球最古のものの1つと考えられているが、今までのところ正確な年代はわかっていない。
今回、Timmons Ericksonたちの研究チームが、ヤラブッバの衝突構造内で、衝撃によって再結晶化した鉱物を分析したところ、衝突事象の正確な年代(22億2900 ± 500万年)が明らかになった。Ericksonたちは、このヤラブッバの衝突構造の年代が、この地域の氷期と一致していることを指摘している。また、今回の研究では、衝突の数値シミュレーションが行われ、ヤラブッバの衝突構造を生み出した隕石が大陸の氷床に衝突した場合には、87兆~5000兆キログラムの水蒸気が大気中に放出され、地球の気候を変える役割を果たした可能性のあることが明らかになった。
doi:10.1038/s41467-019-13985-7
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
動物学:大きな鳥は必ずしも鳥頭というわけではないScientific Reports
-
コンピューターサイエンス:AIツールが創造的なビデオゲーム開発を支援Nature
-
生態学:深海の生態系を調査するNature Communications
-
がん:CAR-T療法を受けた患者に長期寛解Nature Medicine
-
素粒子物理学:最高エネルギーのニュートリノが話題を呼ぶNature
-
動物の行動:カメは磁気地図が食べ物に導くと踊るNature