【工学】3D印刷によって作製された声道を使って古代のミイラの声を再現する
Scientific Reports
2020年1月24日
CTスキャンと3D印刷、電子喉頭を利用することで、3000年前のエジプトのミイラの声道から出る音が合成された。この新知見を紹介する論文が掲載される。これによる音響出力は単音であり、連続した音声を合成するための基盤にならない。
個人の声道の寸法が正確に分かれば、その本人独自の音が得られる。声道の寸法を確定できれば、3D印刷によって作製された声道と電子喉頭を利用して声帯音を合成できる。これを実現するには、声道の軟組織がかなり無傷の状態にあることが必要だ。
今回、David Howard、John Schofieldたちの研究チームは、非破壊CTを用いて、3000年前のエジプト人聖職者Nesyamunのミイラ化した遺体の喉頭と咽喉の構造のかなりの部分が、ミイラ化過程の結果、無傷のまま残ったことを確認した。これによって研究チームは、CT画像から声道の形状を測定することができ、この測定結果に基づいて、Nesyamunの声道を3D印刷によって作製し、音声合成に一般的に用いられる人工喉頭と併用した。この研究チームは、英語の単語「bed」と「bad」にそれぞれ含まれる母音の中間に位置付けられる単音を再現できるようになった。
この研究チームによれば、3000年以上にわたって保存されてきた声道を再現するという概念実証が行われたことは、現代の一般市民に過去を紹介する方法にとって重要な意味を有しており、古代に生きていた人の声道から出る音を聞く機会が得られる可能性がある。
doi:10.1038/s41598-019-56316-y
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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