【遺伝学】タバコをやめると喫煙のシグナルが減る
Nature
2020年1月30日
対象者(16人)の肺の細胞を調べたところ、一部の細胞の変異量が、元喫煙者と喫煙歴のない者で同じだったことが判明した。また、喫煙していた者が禁煙すると、その肺組織の一部にタバコ煙への曝露による損傷のない細胞が補充されることも示唆された。この研究について報告する論文が掲載される。
今回、Peter Campbellたちの研究チームは、喫煙の影響を細胞レベルで解明するため、合計16人の気管支上皮細胞を調べた。その内訳は、小児3名、喫煙歴のない者4名、元喫煙者6名、現役の喫煙者3名である。今回の研究では、気管支細胞の単一細胞から632点のコロニーが作り出され、そのゲノムの塩基配列解読が行われ、遺伝的変異のデータセットが得られた。その結果、これらの変異の大部分は喫煙が原因だったことが判明したが、予想外だったのは、同じ人における変異の量(変異負荷)の細胞間変動性が喫煙によって増大したことだった。同じ気管支上皮の生検で得られた細胞であっても変異の量が10倍も異なること(1細胞当たり1000から10000以上まで)があった。
元喫煙者や現役の喫煙者から採取した細胞の大部分は、変異量が多かったが、変異量が同年齢の喫煙歴のない者と変わらない細胞もあった。現役の喫煙者に、ほぼ正常な変異量の細胞がほとんどなかったのに対し、元喫煙者の場合には、そうした細胞の出現頻度が4倍に達し、研究対象の細胞の20~40%を占めていた。また、Campbellたちは、ほぼ正常な変異量の細胞のテロメアが、元喫煙者の変異量の多い細胞よりも長いことを見いだしており、テロメアが長い細胞は、細胞分裂の回数が少なく、休止状態の幹細胞の子孫細胞である可能性があるという考えを示している。
doi:10.1038/s41586-020-1961-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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