深海の保護に関する海洋科学者たちの優先事項
Nature Ecology & Evolution
2020年2月4日
世界をリードする100人以上の深海生物学者に対する調査の結果、今後の保全・管理戦略で力を入れるべき重要な領域が明らかになった。今回掲載されるこの論文は、サンゴなどの生息地形成種や大型動物などのモニタリングの重要性と、そうした脆弱な生態系に対して採掘などの人間活動が与える影響を強調している。
深海(ここでは海面下200メートル以深と定義)は、地球上で最も大きく最も研究の進んでいない種類の環境(バイオーム)となっている。そこには、生態学的に希少な未知の固有種が多数存在しており、これらに対する産業的深海採掘、深海漁業、気候変動、プラスチック汚染などのさまざまな脅威は、ますます強まっている。
深海で生態学的および生物学的に重要度の高い要素を等級分けするために、Roberto Danovaroたちは、世界中の深海科学者にアンケート式の調査様式を送付した。そして、深海保全のあらゆる側面を網羅する専門家主導の優先事項リストの作成を目的として、112人の科学者からの回答を分析した。
調査の結果、保全の取り組みにはサンゴのように生息地を形成する種が最も重要と考えられていることが示された。深海生息地の生物多様性モニタリングで優先度が最も高いと考えられていたのは、大型および中型生物であった。深海環境モニタリングの他の重要な要素としては、生態系健全性の指標としての生息地の劣化と回復や、生態系全体の機能をモニタリングするための深海群集の食物網構造の区分けなどが挙げられた。気候変動に対する応答のモニタリングで優先度が高かったのは、さまざまな種の存在する深度範囲の変化を明らかにすることであった。
今回の結果は、今後の深海研究や保全、モニタリングに利用される可能性がある。著者たちは、それが産業界や政府、非政府組織に採用されれば、さらに持続可能な海洋管理が行われるようにもなるだろうと結論付けている。
doi:10.1038/s41559-019-1091-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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