【感染症】中国に出現した新興コロナウイルスのゲノム配列
Nature
2020年2月4日
中国で流行し始めた呼吸器疾患に関連するウイルスのゲノム塩基配列について報告する論文が、本日Nature で発表される。このウイルスは、この呼吸器疾患の初期症例に関係する海鮮市場で働いていた患者から分離された。そのゲノムの解析により、中国で生息するコウモリにおいて同定されていたSARS様コロナウイルス群に近縁なウイルスであることが明らかになった。
武漢で最近報告された重症の呼吸器疾患は、中国の他の地域やその他の国々(米国、ドイツ、日本など)に広がっている。最初の患者が入院したのが2019年12月12日で、野生動物も販売されていた武漢の海鮮市場が流行の発生源だった可能性のあることが各種調査によって判明している。
今回、張永振(Yong-Zhen Zhang)たちの研究チームは、2019年12月26日から武漢の病院に入院し、呼吸器疾患の症状(発熱、胸部圧迫感、咳など)を呈した41歳の男性(海鮮市場の従業員)を調べた。抗生物質、抗ウイルス剤、グルココルチコイドを投与する治療が行われたが、患者は呼吸不全を起こし、3日間の治療を経ても症状は改善しなかった。
張たちの研究チームは、この患者から採取した気管支肺胞洗浄液(肺の分泌物の一種)の検体を使ってゲノムの塩基配列を解読した。その結果、新型ウイルスが同定され、このウイルスのゲノムとコウモリに由来する重症急性呼吸器症候群(SARS)様コロナウイルスのゲノムとは、ヌクレオチドの89.1%が同じであることが分かった。1人の患者の分析結果から、新型コロナウイルスが現在の重症呼吸器疾患の流行の原因だと結論づけることはできないが、今回の研究で得られた知見は、別の研究チームが別の患者を対象として独自に行った研究でも裏付けられた。
*今回の研究で決定された塩基配列は、NCBIのSequence Read Archive(SRA)データベースで、バイオプロジェクト・アクセッション番号PRJNA603194として登録され、利用できるようになっている。今回同定されたウイルスの全ゲノム塩基配列は、GenBankにアクセッション番号MN908947として登録されている。
doi:10.1038/s41586-020-2008-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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