【海洋生物学】捕食者から逃れるために群れの中で協調して深く潜水するクジラ
Scientific Reports
2020年2月7日
群れで行動するアカボウクジラとコブハクジラは、極端な同調潜水行動を通じて、捕食されるリスクの低減を図っていることを明らかにした論文が、今週Scientific Reports に掲載される。深く潜水するクジラは他にもいるが、こうした行動は観察されたことがない。この行動の根底にある理由は分かっていない。
今回、Natacha Aguilar de Soto、Mark Johnson、Peter Madsenたちの研究チームは、潜水深さ、潜水時の角度と発声を探知するセンサーを装着したアカボウクジラとコブハクジラ(合計26頭)から得られたデータを解析した。これらのクジラは、きめ細かく調整された潜水行動で深い水域に移動し、反響定位(音を使って獲物を探すこと)を行って採餌しており、シャチに捕獲されやすい浅い水域では発声を抑制していた。これらのクジラが発声を始めたのは、平均水深450メートルの地点で、それから個別に餌を探し始めた。その後、クジラは、平均水深750メートルの地点で再び群れになり、平均水平距離1キロメートルをかけて浅い角度で静かに浮上した。
この研究チームは、これらのクジラが、シャチの攻撃範囲内の水深から離れるまで発声を抑制し、浮上する地点を予測できないようにして、シャチの追跡を防いでいるという考えを示しているが、この戦略のコストが大きいことも指摘している。1時間以上の長い時間をかけて潜水から静かに浮上するために、他のハクジラ類が用いる潜水戦略と比べて採餌時間が約35%短縮される。
以上の新知見は、アカボウクジラとコブハクジラの独特な潜水・発声行動を駆動する強い進化力が捕食リスクであった可能性を示唆している。このことは、クジラの大量座礁に関係があるとされてきた海軍ソナーに対するクジラの反応を説明する上で役立つかもしれない。
doi:10.1038/s41598-019-55911-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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