Research Press Release

【生態学】英国の生物多様性の回復を示す何らかの兆候か

Nature Ecology & Evolution

2020年2月18日

5000種を超える無脊椎動物、非維管束植物、地衣類を分析することにより、過去45年間で英国の生物多様性に複雑な変化が生じたとする報告が、Nature Ecology & Evolution に掲載される。今回の知見は、これらの生物種の2015年の平均存在度が、1970年よりも11%高くなったことを示唆している。

生物多様性の大規模研究は、保全の取り組みが確実に的を射ているようにする上で重要である。しかし、生物多様性の傾向に関する広範囲の分析には無脊椎動物群の多くが登場してこない。昆虫たちの減少を報じた最近の論文は懸念を巻き起こしたが、論文の基礎データは不十分である場合が多い。

Charlotte Outhwaiteたちは、1970年以降の英国の5000種を超える無脊椎動物、コケ類(蘚類、苔類、ツノゴケ類といった非維管束植物)および地衣類の存在状況に関する年次的傾向を分析した。全国的なモニタリング計画29件のデータを利用することにより、1970~2015年の全国的な変化が種ごとに推定された。

その結果、全生物種の2015年の平均存在度は1970年との比較で11%高かったことが明らかになった。存在度の上昇率は、昆虫が5.5%、コケ類および地衣類が36%であった。昆虫以外の無脊椎動物のみが6%超の減少を示した。淡水種は、20年近くにわたる減少を経て、2015年までに約7%回復した。しかし、個々の種の汎存性と希少性の間には変化があり、群集構成が変化しつつあることが示唆された。

そうした変化は環境規制の導入につながる可能性がある。しかしOuthwaiteたちは、生物多様性の幅広い低下は大規模な土地利用変化および産業革命によって1970年代以前に起こっていたようだと注意を促している。

doi:10.1038/s41559-020-1111-z

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

「注目のハイライト」記事一覧へ戻る

プライバシーマーク制度