気候変動:北極に新しい海洋生態系が形成されつつあるのか
Nature Climate Change
2020年2月25日
北極圏太平洋の物理的特性と生物学的特性の変化が、2017年から2019年まで非常に温暖になったことに関連している可能性を示唆した論文が、Nature Climate Change に掲載される。
北極圏太平洋を構成するチュクチ海とベーリング海北部は、海氷の季節的影響に支配された生産性の高い海洋陸棚域である。この海域は、夏季には海洋生物や海鳥が大量に生息し、海洋哺乳類の主要な移動用の回廊になっている。チュクチ海とベーリング海北部は、2017年から2019年までの非常に温暖な冬の間に著しい変化を示した。しかし、こうした変化が異常なのか、今後は普通のことになっていくことを示しているのかは明らかでない。
この論文で、Henry Huntingtonたちの研究チームは、2017年から2019年までの北極圏太平洋の物理学的観測結果と生物学的観測結果を報告している。ここには、2017年以降の生態系の変化が含まれている。海氷域の減少と海水温の上昇は、この海域の生物学的特性に連鎖的な変化をもたらした。例えば、この海域では、この期間中に亜寒帯種が生息していた。北極圏太平洋では生態系の変化が長い間観測されてきたが、2017年は、種の分布や各種事象の発生時期に関する過去の観測結果とは大きく異なる1年だった。
Huntingtonたちは、北極圏太平洋の地域海洋生態系が変化している可能性があり、この変化の影響を解明するためにさらなる研究が必要だと結論付けている。
doi:10.1038/s41558-020-0695-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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