考古学:トバ山の大噴火を生き延びた現生人類
Nature Communications
2020年2月26日
現生人類は、約7万4000年前に発生したトバ山の大噴火を挟んでインド北部に居住し続けていたという見解を示した論文が、今週、Nature Communications に掲載される。この論文には、ソン川渓谷の遺跡から石器が発見され、この地域に現生人類が過去8万年間にわたって居住し続けてきたことが示されたことが報告されている。この新知見は、現生人類がアフリカから東に向かって分散したことに関する手掛かりになる。
インドネシアのスマトラ島にあるトバ山の噴火は、長期にわたる火山の冬を引き起こし、現生人類のアフリカからの分散とオーストラレーシアへの定着を阻害したと主張されてきた。こうしたヒト集団に対する影響については論争が続いているが、主要地域(インドなど)からの考古学的証拠は少ない。
今回、Chris Clarksonたちの研究チームが、インドのミドル・ソン川渓谷にあるダバの遺跡で行われた考古学的発掘調査で発見された大量の石器について報告している。発見された石器は、約8万年前のルヴァロワ文化の中核的石器群(石核から剥片を剥離して作られた石器)から細石器技術(通常の長さが数センチメートルの小型の石器を製作する技術)に移行した約4万8000年前の石器まで含まれていた。この考古学的記録に連続性が認められることから、この地域に居住していた現生人類はトバ山の大噴火を生き延びたことが示唆されている。
ダバで発見されたルヴァロワ石器とアラビアで発見された10万~4万7000年前の石器とオーストラリア北部で発見された6万5000年前の石器に類似点があり、このことは、古代の現生人類のアフリカからの分散によって、これらの地域の間に結び付きが生じたことを示唆している。
doi:10.1038/s41467-020-14668-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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