動物学:確率を理解しているオウム
Nature Communications
2020年3月4日
ニュージーランド産のミヤマオウム(ケアオウム)は、確率を理解し、それに基づいて行動できることを報告する論文が、今週Nature Communications に掲載される。これは、大型類人猿以外の動物が統計的推論を行うことを初めて報告した論文だ。
今回、Amalia BastosとAlex Taylorは、研究対象の動物が統計を理解しているかどうかを判定するための基準を検証することを目的とした実験を行った。今回の研究は、以前に霊長類とヒト乳児で行われた研究に非常によく似ている。まず、Blofeld、Bruce、Loki、Neo、Plankton、Tazという名の6羽のミヤマオウムを訓練して、報酬が得られることをブラック色と関連付け、報酬が得られないことをオレンジ色と関連付けさせた。そして、2つの透明な広口びんにブラック色とオレンジ色の木片(トークン)を混在させ、それぞれのびんの中からオウムに見えないように1個のトークンを取り出し、それぞれの手の中に握り、オウムに差し出して選ばせる実験を行った。ブラックとオレンジのトークンの相対頻度は、びんによって異なっていた。
その結果、ミヤマオウムは、報酬が得られる色のトークンの出現頻度の高い広口びんから取り出されたトークンを選ぶ傾向を示した。ただし、この出現頻度は、相対頻度であり、必ずしも絶対頻度である必要はなかった。次に、広口びんの中に仕切板を水平に差し込んで、仕切板の上にあるトークンだけを取り出せるようにして報酬が得られるトークンの割合を変えたところ、ミヤマオウムは、この物理的制約に感づき、報酬の得られるトークンが取り出される確率の高い広口びんの方を選んだ。さらに、ミヤマオウムは、以前に報酬の得られるトークンを差し出すことが多いという「バイアス」を示した実験者が差し出すトークンを選ぶ傾向も示した。
先行研究では、真の統計的推論ができるのはヒトと大型類人猿だけとされていた。この種の複雑な高次認知過程を鳥類が有することを明らかにすることは、統計的推論の進化史を解明する上で役立つとされる。
doi:10.1038/s41467-020-14695-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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