地球科学:地球と月の酸素同位体組成は異なる
Nature Geoscience
2020年3月10日
地球と月の酸素同位体組成は、同一ではなく明確に異なっていることを示した論文が、Nature Geoscience に掲載される。今回の知見は、月の形成に関する現在の理解に疑問を投げ掛ける可能性がある。
巨大衝突仮説は、月は、初期地球とテイアと呼ばれる原始惑星との巨大衝突の後の残骸から形成されたことを示唆している。地球と月は地球化学的に似ており、アポロ計画により月から持ち帰られた試料は、ほぼ同一の酸素同位体組成を示している。巨大衝突仮説は、地球と月の地球化学的類似性の多くを説明できるが、酸素同位体組成が極めて似ていることをこのシナリオと調和させることは難しかった。2つの天体は、初めから酸素同位体の同一の組成を持っていたか、衝突の直後に2つの天体の酸素同位体が完全に混合したとするかであるが、前者の可能性は低く、後者はシミュレーションでモデル化することが困難であった。
今回、Erick Canoたちは、一連の月の試料について、酸素同位体組成の高精度測定を行った。その結果、測定した石の種類によって、酸素同位体組成が違うことが分かった。これは、衝突の後に溶けた月と、蒸発してできた大気との間の混合の度合いによる可能性がある。月のマントル深部から得られた試料の酸素同位体は、地球の酸素同位体と最も異なっていた。著者たちは、月のマントル深部は混合が最も少なく、衝突したテイアを最も表している可能性があると示唆している。
doi:10.1038/s41561-020-0550-0
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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