宇宙物理学:恒星が密集する環境での中性子星とブラックホールの衝突
Communications Physics
2020年3月6日
恒星が密集している環境において中性子星とブラックホールが合体した場合には、孤立した環境で合体した時に見られる電磁放射の放出が起こらないことがモデル研究で明らかになった。また、恒星が密集している環境で起こる中性子星とブラックホールの合体には、孤立した環境での合体にない2つの独特な特徴があることも明らかになった。これらの新知見は、今後の重力波の観測結果を解釈する際に有益な識見となるかもしれない。この研究成果を報告する論文が、Communications Physics に掲載される。
中性子星とブラックホールが合体する際に放出される重力波が検出されると、恒星の進化、核物質と一般相対性理論に関する大量の情報がもたらされる。中性子星とブラックホールの合体に関する理論的な枠組みは確立されているのだが、恒星が密集している環境内で合体する際に両者がどのように相互作用するかは明確になっていない。
今回、Manuel Arca Seddaは、詳細なシミュレーションを用いて、中性子星とブラックホールの合体がどのように起こるのかをモデル化した上で、こうしたシミュレーションを天の川銀河と近傍宇宙にある星団の観測結果と組み合わせた。その結果、恒星が密集している環境において2つの巨大な天体が合体してできた系は、孤立した環境で生成した類似の系と異なる可能性が明らかになった。また、恒星が密集している環境で起こる合体は、総質量が大きく、ブラックホールも重く、合体時又は合体の直後に放射線または光線を放出しない可能性のあることも分かった。この新知見は、恒星が密集している環境内で起こる中性子星とブラックホールの合体を検出できるのは、重力波を探索する望遠鏡だけである可能性を示唆している。
doi:10.1038/s42005-020-0310-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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