農業:オゾン濃度がカリフォルニアの多年生作物の収量減少につながっている
Nature Food
2020年3月17日
オゾン濃度は、米国カリフォルニア州の多年生作物の収量に悪影響を及ぼしてきており、年間10億米ドル(約1100億円)の損失をもたらしたと推定するモデル研究について報告する論文が、Nature Food に掲載される。
気温や大気質が変化すると、農業生産性に影響が出るが、この点に関する研究の大部分は、主要な一年生作物(例えば、コムギ、ダイズ、イネ)に着目していた。多年生作物(例えば、果物とナッツ)に対する気候変動と大気質の影響については、比較的わずかな情報しか得られていない。多年生作物は、食事の多様性と栄養にとって大切で、米国カリフォルニア州の農業の経済的価値という観点では、全体の約38%を占めている。カリフォルニア州では、400種以上の農産品が生産されており、米国の果実とナッツの3分の2、野菜類の3分の1以上がカリフォルニアから供給されている。同州の2015年の農業生産高は、約600億米ドル(約6兆6000億円)と評価された。
今回、Chaopeng Hongたちの研究チームは、1980〜2015年に収集されたオゾン濃度、気温、作物収量に関する過去のデータを用いて、気温よりもオゾン濃度の方が、(一般に生食される)テーブルブドウ、ワイン用ブドウ、イチゴ、クルミ、フリーストーンピーチ、ネクタリン、干し草の収量を減少させることを明らかにした。収量に対する影響を最も大きく受けたのがテーブルブドウで、約22%の収量減少と推定された。その原因としては、ブドウの生産地であるサンホアキン渓谷のオゾン濃度が高いことが考えられる。
また、Hongたちは、収量が依然として大きく落ち込んでいるものの、オゾン濃度が徐々に低下すると収量が増加することを実証した。こうした変化をもたらしたのは、調査期間中に実施されていたカリフォルニア州の大気汚染防止規制だったとHongたちは考えている。
doi:10.1038/s43016-020-0043-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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