進化:初期の魚類に「指」があったことを示す化石
Nature
2020年3月19日
このほど胸鰭に指のような付属肢の骨格を持つ化石魚が発見され、脊椎動物の手(前肢)の起源に関する手掛かりが得られた。この化石は、魚類から陸生脊椎動物への進化の1段階を示すと考えられている魚類Elpistostege watsoniの最も完全な標本である。この研究報告が、Nature に掲載される。
四肢類(4本足の脊椎動物)が出現したのは約3億7400万年前だったことが、骨格化石から示唆されているが、それより古い化石の一部に四肢の痕跡があり、出現時期がさらにさかのぼることを示唆している可能性がある。これまでのところ、脊椎動物が陸上に移動した時の進化の記録は、デボン紀中期から後期(3億9300万年~3億5900万年前)の四肢類様魚類Elpistostegaliaの化石数点に大きく依存している。しかし、これらの化石からは、胸鰭(前鰭)の完全な骨格構造が明らかにならなかった。
今週掲載されるRichard Cloudier、John Longたちの論文では、これまでに発見された最も完全なElpistostegaliaの化石について説明している。これは、長さ1.57メートルのE. watsoniの化石標本で、カナダのケベック州ミグアシャのエスクミナック層から発見された。この研究で、Cloudierたちは、高エネルギーX線CTスキャンを用いて、胸鰭の完全な骨格構造を明らかにした。E. watsoniの胸鰭骨格には、2本の識別可能な指があり、この他に指と推定されるものがあと3本あったが、胸鰭には鰭条も保持されていた。Cloudierたちは、こうした骨の配置は、胸鰭で見つかった最も四肢類に類似した実例だと結論付け、脊椎動物の手は、Elpistostegaliaの胸鰭内の骨格パターンから生じたという見解を示している。
doi:10.1038/s41586-020-2100-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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