Research Press Release
気候:南半球の大気循環に変化が生じたことの影響
Nature
2020年3月26日
南半球の大気循環に生じた複数の変化が、オゾン層の回復と関連していたという研究結果について報告する論文が、Nature に掲載される。今回、大気循環に生じたさまざまな変化を調べる研究が行われ、このようにオゾン層の回復が起こったのは、モントリオール議定書が実施されたことの直接的な結果だったことが示唆されている。
人為起源のオゾン層破壊物質の排出は、オゾン層の減少に寄与し、そのために南半球の大気循環に変化が生じた。主な変化としては、中緯度ジェット気流の極方向への移動、熱帯循環と亜熱帯乾燥帯の拡大がある。こうした変化は、降水量に影響を与えたことが実証されており、南半球の海洋循環と海洋塩分にも影響を与えた可能性がある。
今回、Antara Banerjeeたちの研究チームは、1980〜2017年の大気再分析(データとモデリングの併用)を用いて、上記の傾向が、2000年頃から停止あるいは逆転していることを明らかにした。例えば、南半球のジェット気流が2000年まで極方向に移動していたことが判明しているが、その後は移動が停止していると考えられている。時期的に見ると、2000年頃の南極のオゾン層の回復と一致しており、モントリオール議定書で義務付けられているオゾン層破壊物質の低減が、大気循環の傾向が停止している原因である可能性が示唆されている。
doi:10.1038/s41586-020-2120-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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