生物学:人体の単一細胞マップ
Nature
2020年3月26日
ヒトの全ての主要臓器の細胞種組成を示した論文が、Nature に掲載される。今回の研究では、中国漢民族のドナーから集めた50万点以上の単一細胞のRNAの配列解読が行われた。このデータは、ヒト細胞アトラスの完成を目指した国際的活動に寄与することが期待される。
1人のヒトの体を構成する細胞は、それぞれ同じ基本的遺伝情報を持っているが、発現する遺伝子は細胞によって大きく異なっている。細胞の機能は、その細胞で発現する遺伝子によって決まる。人体の全体について単一細胞の遺伝子発現を示したマップがあれば、これらの細胞の機能と細胞活性に影響する因子を理解する上で役立つ。こうしたアトラスは、数種類の動物とヒトの一部の組織種について作成されているが、ヒトの単一細胞遺伝子発現と細胞種の包括的な全体像を記述したものはない。
今回、Guoji Guoたちの研究チームは、成人と胎児の両方の組織を含むヒトの組織種(60種)について、単一細胞RNA塩基配列解読データを生成した。このようなデータにより、異なる臓器を構成する細胞種を比較解析することができ、発生段階において個別細胞の遺伝子発現がどのように異なっているのかを解明するための手掛かりが得られた。Guoたちは、このデータをマウスの臓器から作成された同種のデータセットと比較し、保存された遺伝子発現パターンを突き止めた。Guoたちは、各組織の細胞の標本サイズが小さいため、今回の研究には限界があると指摘する一方で、ヒトに関してこれまでに報告された細胞種のレパートリーの中で最も包括的なものが得られたという見解を示している。
doi:10.1038/s41586-020-2157-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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