食品科学:牛肉に似た培養肉の作製に役立つ足場材料
Nature Food
2020年3月31日
培養肉の生産に用いる食用の足場材料の新しい作製方法について報告する論文が、Nature Food に掲載される。この足場材料は、組織状ダイズタンパク質から作られており、人間が食べる牛肉に似た製品の生産に用いることができる。この牛肉似の製品は、暫定味見試験で、好成績をあげた。
培養肉は、進化途上の技術であり、畜産を行わずに食肉を生産できる。培養組織の作製には、3次元の足場材料が必要で、これが、作製された細胞の支えとなり、動物の筋肉が成長する環境を模倣する。また、この足場材料は、食用に適していることと適切な栄養価と食感が必要とされる。
この論文で、Shulamit Levenbergたちは、費用効果が高く、食用に適しており、多孔質タンパク質材料である組織状ダイズタンパク質から足場材料を作製する新しい方法について記述している。Levenbergたちは、この足場材料の大部分が、ウシ衛星細胞に覆われていることを発見した。この衛星細胞は、組織状ダイズタンパク質の足場内に「播種」され、増殖して組織を形成する。また、Levenbergたちは、ウシ平滑筋細胞と共培養した場合とウシ平滑筋細胞とウシ内皮細胞と共培養した場合に細胞外高分子が多く発生するようになり、肉のような食感も改善された。その後、ボランティアがこの製品を調理して、試験を行い、本物の肉に典型的な味、香り、食感があると報告した。
今回の研究結果は、培養肉をスケールアップして、人間が消費するタンパク質の新たな供給源を生み出して、畜産への依存を減らすための手段をもたらすと考えられるとLevenbergたちは結論付けている。
doi:10.1038/s43016-020-0046-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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