Research Press Release
惑星科学:火星内部にある古代の水の貯蔵庫
Nature Geoscience
2020年3月31日
火星のマントルには、惑星の歴史の初期から保存されてきた、鉱物に囲まれている複数の水の貯蔵庫が存在する可能性があることを報告する論文が、Nature Geoscience に報告される。この発見は、火星のマントルが多様な化学組成を持っていて、全球のマグマオーシャンから形成されたのではないことを示唆している。
火星の水素同位体組成からは、火星のさまざまな水の貯蔵庫についての洞察が得られる。火星形成に関する既存のモデルでは、マントルが一様な水素同位体組成を持つと仮定されてきた。しかし、火星の岩石と火星の大気の同位体組成がさまざまであるため、こうしたモデルは複雑なものとなり、火星内および火星上に存在する水の貯蔵庫の特定は困難であった。
今回、Jessica Bamesたちは、火星の地殻に由来し、それぞれおよそ39億年前と15億年前に水と相互作用をした2つの隕石鉱物の水素同位体組成を分析した。その結果、2つの隕石は同様の水素同位体組成を持つことが分かった。この組成は、より最近の火星の地殻物質のものにも類似しており、火星の水の組成が過去39億年の間、一貫したものであったことを示している。著者たちは、これを他の火星隕石のデータと比較し、火星のマントルには、鉱物に囲まれていて水素同位体組成が異なる水の貯蔵庫が、少なくとも2つ存在することを見いだした。
doi:10.1038/s41561-020-0552-y
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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