進化:ヒトの歯を手掛かりとした顔の進化の解明
Nature
2020年4月2日
初期のヒト族種であるホモ・アンテセソールの歯のエナメル質の分析が行われ、ホモ・アンテセソールが、ヒト(Homo sapiens)、ネアンデルタール人とデニソワ人の最終共通祖先と近縁関係にあったことが示唆された。このようなヒト族の進化におけるホモ・アンテセソールの位置づけは、その現代的な顔貌がヒト属の祖先に深く根ざしていることを意味している。このような研究結果が、今週、Nature に発表される。
ホモ・アンテセソールなどの前期更新世(約250万年〜77万年前)のヒト族種と後代のヒト族種の関係については議論が続いている。ホモ・アンテセソールの現代的な顔貌のいくつかを根拠として、ホモ・アンテセソールがネアンデルタール人と現生人類の最終共通祖先である可能性が提起された。しかし、断片化石による化石記録しかなく、ユーラシアにおける前期更新世と中期更新世のヒト族の古代DNAの復元ができていないため、この問題は未解決のままになっている。
今回、Frido Welker、Enrico Cappelliniたちの研究チームは、スペインのアタプエルカで出土した(94万9000~77万2000年前の)ホモ・アンテセソールとジョージアのドマニシで出土した(約177万年前の)ホモ・エレクトスの臼歯のエナメル質からタンパク質を抽出した。そして、ホモ・アンテセソールから得られた古代のタンパク質配列に基づく系統発生解析が行われ、ホモ・アンテセソールが、その後の中期更新世と後期更新世のヒト族(現世人類を含む)に近縁な姉妹系統群であることが明らかになった。今回の論文の著者は、以上の知見に基づいて、ネアンデルタール人の頭蓋の形状が原始的なものではなく、派生的なものであると考えている。
この研究結果は、ホモ・アンテセソールのその他のヒト族集団に対する進化的関係に関する新たな手掛かりをもたらしている。
doi:10.1038/s41586-020-2153-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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