微生物学:海底下の火山岩に棲みつく微生物
Communications Biology
2020年4月3日
海底下100メートル以上の地中に存在する火山岩に微生物群集が高密度に定着していることを報告する論文が、Communications Biology に掲載される。この新知見は、地球と地下環境が類似した他の惑星(例えば火星)に微生物が存在する可能性のあることを意味していると考えられている。
地球の上部海洋地殻は、過去38億年間、中央海嶺での玄武岩質溶岩噴火によって形成されてきた。形成後350万~800万年以内の海嶺系には、無機エネルギー源に依存して生きる細菌とその他の微生物が存在していることが、先行研究によって明らかになっている。しかし、地球の海洋地殻の90%以上は1000万年以上前に形成されたものであり、それよりも古い玄武岩質溶岩中の微生物については、ほとんど分かっていない。
今回、東京大学大学院の鈴木庸平(すずき・ようへい)たちの研究チームは、3300万~1億400万年前の玄武岩質溶岩試料中の微生物を分析した。その結果、溶岩中の鉄に富んだ粘土脈に微生物が集中し、その密度が1立方センチメートル当たり100億細胞以上であることが分かった。この密度は、これより新しい玄武岩溶岩中の微生物細胞の密度の100万倍を超えている。鈴木たちは、粘土中の鉄に結合した有機物がこのような高密度群集の生存を支えているという考えを示し、古い玄武岩に棲みつく微生物の大部分が、有機エネルギー源を利用する細菌と近縁な関係にあることも明らかにした。
doi:10.1038/s42003-020-0860-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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