惑星科学:オウムアムアはどのように形成されたか
Nature Astronomy
2020年4月14日
恒星間天体オウムアムア(‘Oumuamua)は、親星の非常に近くを通過し、潮汐力によってばらばらにされる前に放出された、惑星体の断片であるという可能性を示した論文がNature Astronomy に発表される。この発見は、オウムアムアの異常に細長い形、もやがかった彗星コマの欠如、そしてオウムアムアが太陽から遠ざかったときの非重力的な力を経験したことを含む、いくつかの独特な特徴を説明できる可能性がある。
オウムアムアは、太陽系内で発見された最初の恒星間天体であった。オウムアムアは、その外観から彗星に似た天体と予想されたが、初期の観測は彗星活動の証拠を持たない、小惑星に似た天体であることが明らかになった。また、オウムアムアは、モデルによる再現の難しい、多くの特異な特性も示している。
今回、Yun ZhangとDouglas Linたちは、オウムアムアの特異な特徴を説明するための統一的な形成理論を提唱している。著者たちは最先端のモデルを用いて、中心に存在する星の近くを軌道運動するオウムアムアの親天体の潮汐破壊をシミュレーションした。その結果、親天体が中心星から数十万キロメートル以内に近づけば、親天体は、中心星の潮汐力によってゆがめられ、その後、破壊されることが分かった。親天体は、惑星系から脱出するために十分な運動エネルギーを持った、非常に細長い、タンブリング運動を行う断片を形成する。親天体の表面は非常に高温となり、大部分の揮発性物質は蒸発する。著者たちは、水が深い層に保持されている可能性があり、オウムアムアの多孔質の表面を通じた蒸発が、太陽を通り過ぎた間に観測された非重力的な加速を説明できる可能性があると提案している。
著者たちは、オウムアムアの前駆天体は、低質量星あるいは白色矮星の周りを軌道運動している、キロメートルサイズの微惑星(惑星の前駆天体)、あるいは近接した岩石質のスーパーアースである可能性があると示唆している。
doi:10.1038/s41550-020-1065-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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