代謝 : 運動が老齢マウスの筋肉を若返らせる
Nature Metabolism
2020年4月14日
マウスの自発的な運動が筋肉の修復を加速し、老化した筋肉幹細胞を回復させることを示した論文が、Nature Metabolism に掲載される。
加齢に伴って、筋肉量は減少し、筋肉の再生能力と修復能力は低下する。こうした能力低下の原因には、筋肉幹細胞(MuSC)の数の減少と加齢に伴う再生能力の減退の両方が関わっている可能性が高い。これまでの研究から、加齢しても運動することにより筋肉量が維持できることが分かっているが、運動が再生能力の維持に及ぼす影響についてはほとんど知られていなかった。
今回、Thomas Randoたちは、若いマウスと老齢のマウスに、自由に回転する回し車を与えて、3週間自発的に使わせた。すると、老齢のマウスほど、筋肉の修復が加速され、MuSCの機能が改善されることが分かった。このMuSCの活性改善は、休眠状態の幹細胞のサイクリンD1(細胞周期の進行に必要なタンパク質)レベルが、若いときのレベルに回復することによる。サイクリンD1は、老化を促進するTGF-β–Smad3情報伝達経路を休眠状態のときに抑制し、最終的にMuSCの再生を促進する。このような変化は、若いマウスでは老齢マウスほど明確には起こらない。
この研究によって、短期間の自発的運動療法は、老齢のMuSCの活性を回復させる実用的な介入方法であることが示されたが、これらの知見がヒトにも通用するかを判断するには、さらに研究が必要である。
doi:10.1038/s42255-020-0190-0
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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