医学研究:子どもの頃の予防接種が抗生物質の使用量に及ぼす影響
Nature
2020年4月30日
呼吸器疾患や下痢を引き起こす肺炎球菌やロタウイルスの予防接種プログラムの拡大や導入によって、低・中所得国の子どもに対する抗生物質の使用を減らせる可能性のあることが明らかになった。この新知見を報告する論文がNature に掲載され、子どもの頃に予防接種を優先的に実施することが、抗菌薬耐性に対処するための世界的戦略の1つになるという考え方が支持されている。
今回、Joseph Lewnardたちの研究チームは、抗生物質耐性の影響が最も大きく現れている低・中所得国で実施された大規模世帯調査のデータを解析し、5歳未満の小児に対する肺炎球菌ワクチンとロタウイルスワクチンの接種が抗生物質の使用に及ぼす影響を評価した。その結果、抗生物質によって治療される呼吸器感染症の24.8%、下痢性感染症の21.6%が、肺炎球菌ワクチンとロタウイルスワクチンに感受性のある病原体によって引き起こされることが分かった。肺炎球菌結合型ワクチンまたはロタウイルスワクチンを接種された小児は、ワクチン未接種の小児と比べて、抗生物質によって治療される呼吸器感染症と下痢性感染症の発症率がそれぞれ8.7%、8.1%低かった。
Lewnardたちは、低・中所得国の子どもたちの場合、現在の肺炎球菌とロタウイルスの予防接種プログラムによって、抗生物質によって治療される呼吸器疾患の発症が年間2380万例予防され、抗生物質によって治療される下痢性疾患の発症が1360万例予防されていると推定している。これらのワクチンがすでに使用されている国々で接種率が向上し、子どもがこれらのワクチンの接種を受けていない国々でワクチンが導入されれば、抗生物質によって治療される疾患の発症が、新たに4000万例予防できると考えられている。
doi:10.1038/s41586-020-2238-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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