Research Press Release
神経科学:患者の意識状態を嗅ぎ出す
Nature
2020年4月30日
重度の脳損傷患者が、いろいろな匂いにどのように反応するのかを観察すれば、患者の意識レベル、回復の見込み、長期生存が分かるという考えを示した論文が、今週、Nature に掲載される。匂いに対する反応は、患者が最小意識状態にあるのか、無反応状態にあるのかを識別することを通じて、生存率を改善できると考えられ、使いやすいツールとして活用できる可能性のあることが、今回の研究結果によって示唆されている。
脳損傷患者の意識状態の測定は難しく、誤診がよくあり、誤診率は40%と高い。それにもかかわらず、脳損傷患者の治療戦略を決定し、終末期においてさまざまな決定を行う際には、意識レベル(例えば、最小意識状態、無反応状態)が今でも用いられている。今回、Noam Sobelたちの研究チームは、嗅覚が意識のバイオマーカーになる可能性があると提唱している。
今回の研究では、43人の意識障害の患者を対象として、快い匂い(シャンプー)と不快な匂い(腐った魚)に対する匂い嗅ぎ反応を評価した。その結果、Sobelたちは、匂い嗅ぎ反応(鼻孔から吸入される空気量の変化)が、最小意識状態の患者と無反応状態の患者で異なっていたことを報告している。無反応状態の患者の場合、その患者が今後意識を回復するかどうかを匂い嗅ぎ反応から確実に予測することができた。さらに、脳損傷を受けた直後に匂い嗅ぎ反応のあった患者の生存率は、匂い嗅ぎ反応のなかった患者より高かった。
doi:10.1038/s41586-020-2245-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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