人間行動:インターネット上に現れた予防接種に対する感情をマッピングする
Nature
2020年5月14日
ソーシャルメディア上で展開される予防接種の支持派・反対派・中立的立場の意見のやりとりと、それらが相互に及ぼすと考えられる影響をマッピングした結果を報告する論文が、今週、Nature に掲載される。この研究成果は、ワクチンに関する科学的専門知識への不信感が、オンラインコミュニティーでどのような変化を遂げるのかという点に関する手掛かりをもたらしている。
今回、Neil Johnsonたちの研究チームは、フェイスブックから得られた情報を使って、ほぼ1億人の人々がインターネット上で表明した予防接種に関する意見をマッピングした。これらの人々は、予防接種の支持派や反対派、あるいは中立的立場の意見を表明する特定のフェイスブックのページとつながっており、国や言語を超えて相互作用するクラスターを形成していることが分かった。それぞれのクラスターのサイズは、特定のフェイスブックページのファン数によって決定された。
今回の研究から、予防接種反対派が数の上では少数派であるにもかかわらず、こうしたクラスターのネットワークの中心に位置していることが明らかになった。予防接種反対派のクラスターは、予防接種に対して中立的な意見と関連するクラスター(予防接種や予防接種に関連したテーマを取り上げているが、賛成や反対の立場を明確にしていないフェイスブックのページ)とも強く絡み合っていた。これに対して、予防接種支持派のクラスターは、マップ上の周辺部にあった。このことからJohnsonたちは、予防接種反対派クラスターの方が中立派のクラスターに近づきやすく、その結果、予防接種に関して中立的だった人々を自陣に取り込むことができたという見解を示している。
またJohnsonたちは、理論的枠組みを用いて、2019年に起こった予防接種反対派の支持者の増加を再現して、予防接種反対派の考え方が今後10年間で予防接種に関する支配的な意見になる可能性があるという予測を導き出した。Johnsonたちは、このネットワークの動態を解明することが、予防接種やその他の問題(例えば、気候変動)に対して否定的態度を示す人の増加を阻止する手法の開発に役立つ可能性があると主張している。
doi:10.1038/s41586-020-2281-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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