古生物学:古代の寄生の証拠が見つかった
Nature Communications
2020年6月3日
約5億4100万年前のカンブリア爆発の直後に、動物が寄生者と食物を争わなければならない状況があったことを報告する論文が、今週、Nature Communications に掲載される。今回の研究で、古代の腕足動物に寄生していた生物が、宿主の食物をかすめ取っていた可能性が非常に高いことが明らかになった。この知見は、これまでに化石記録において特定された最も古い寄生者–宿主関係になる。
腕足動物は、小さな貝殻のような海洋動物で、軟体動物の二枚貝類に似ている。現生の腕足動物は約450種だが、化石記録からは1万2000種以上の腕足動物が知られている。
今回、Zhifei Zhangたちの研究チームは、中国雲南省で発見され、年代測定によって約5億1200万年前のものとされたカンブリア紀の腕足動物であるNeobolus wulongqingensisの化石集団を分析した。その結果、多くのN. wulongqingensisの殻の外側には、棲管の中で暮らす生物が張り付いていることが分かった。生物が張り付いているN. wulongqingensisは有意に小型で、棲管の向きはN. wulongqingensisの摂食流の向きと一致していた。以上から、Zhangたちは、この棲管の中で暮らす生物が、宿主の食物を盗み取って宿主の適応度を低下させる寄生者(労働寄生として知られる)と考えている。
寄生者と宿主の相互作用は、大部分の推論が外観に基づいたものにならざるを得ないため、化石記録に残すことは難しい。今回の研究で、Zhangたちは、寄生の外観に関してだけでなく、寄生のコストに関しての希少な証拠も集めた。
doi:10.1038/s41467-020-16332-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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