惑星科学:系外惑星の生命居住可能性を高める鉱物ダスト
Nature Communications
2020年6月10日
系外惑星の大気中に鉱物ダストがあると、生命居住可能性が高くなると考えられるという研究報告が、今週、Nature Communications で発表される。この知見は、地球型系外惑星を研究する際にダストの潜在的影響を考慮する必要があることを浮き彫りにしている。
星の周囲の「ハビタブルゾーン(生命居住可能領域)」に存在する地球型惑星の表面には、液体の水が存在する可能性があると考えられている。そのため、ハビタブルゾーンは、地球外生命の探索の目標になることが多い。しかし、生命居住可能性は、惑星の大気の組成にも依存する場合がある。鉱物ダスト(地表に由来する炭素–ケイ酸塩系物質)は、気候システムに影響を及ぼすことがあるが、この点は、これまで系外惑星の気候をモデル化する研究で見過ごされていた。
今回、Ian Boutleたちの研究チームは、大気中に浮遊する鉱物ダストが地球型系外惑星の生命居住可能性に大きな影響を与えることを、シミュレーションによって実証した。潮汐作用によって恒星に固定された惑星(恒星に対して常に同じ側を向けている)では、大気中にダストが存在していると、系外惑星の昼側が冷やされ、夜側が温められるため、そうした系外惑星が存在するハビタブルゾーンが広がることが明らかになった。Boutleたちは、ダストによってハビタブルゾーンの内縁部では惑星の水分損失が遅くなり、外縁部では惑星の温度が上昇すると考えている。
また、Boutleたちは、系外惑星からの透過スペクトルのシミュレーションにおいて、大気中にダストが含まれていると水蒸気や酸素などの重要なバイオマーカーを検出しにくくなる可能性のあることも明らかにした。Boutleたちは、太陽系外惑星の生命居住可能性に関する観測結果を解釈する際には、このことを考慮すべきだと主張している。
doi:10.1038/s41467-020-16543-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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