古生物学:柔らかい殻の卵の進化を示す「硬い」証拠
Nature
2020年6月18日
羊膜類の卵の進化に関する新たな手掛かりをもたらした2つの研究について報告する論文が、今週、Nature に掲載される。Mark Norellたちの論文では、最初の恐竜が柔らかい殻の卵を産んだという見方が示されており、この見解は、恐竜類が硬い殻の卵を産んだとする一般的な見解と相いれない。一方Julia Clarkeたちの論文では、南極大陸で初めて発見された化石卵である柔らかい殻の大型の卵について記述されている。
羊膜類は、鳥類、哺乳類、爬虫類を含む分類群で、胚の乾燥を防ぐ働きをする内膜(羊膜)を持つ卵を産む。羊膜類の中には、トカゲ類やカメ類のように殻の柔らかい卵を産むものもあれば、鳥類のように強く石灰化した硬い殻の卵を産むものもある。こうした多様性は、さまざまな進化の軌跡を示している。石灰化卵は繁殖の成功に寄与し、その結果として羊膜類の生息地の拡大と多様化に寄与した可能性が高いため、環境ストレスに対する防御を高める石灰化卵の進化は、羊膜類の歴史上の節目を表している。しかし、柔らかい殻の卵が化石記録に残されることはまれであり、そのため柔らかい殻から硬い殻への移行を研究することは難しい。
Norellたちは、プロトケラトプスとムスサウルスという2つの恐竜種の胚を含む化石卵を調べ、その殻が柔らかかったことを明らかにした。Norellたちは、恐竜類では、硬い殻の石灰化卵は少なくとも3回独立して進化しており、祖先種の柔らかい殻の卵から進化した可能性が非常に高いという見解を示している。現生爬虫類の一部と同じように、柔らかい殻の卵が水分を含んだ土や砂の中に産み付けられ、植物物質の分解過程で生じる熱によって孵化した可能性が高い。
一方、Clarkeたちは、南極大陸で約6600万年前の白亜紀の堆積物からほぼ完全な形で発掘された、フットボールサイズの柔らかい殻の化石卵について記述している。この化石卵は、これまでに報告された化石卵としては最大級のもので、マダガスカルで発見された絶滅した鳥類であるエピオルニスが産んだ卵に次いで2番目に大きい。その大きさと結晶性外層のない薄い殻は、「退化した」卵が母体内で成長して産卵直後に孵化するという、卵胎生の生活様式を示唆している。この化石卵は、新しいタクソンAntarcticoolithus bradyiに属するとされたが、この卵の母親は謎に包まれたままである。この点について、Clarkeたちは、モササウルスのような巨大な海生爬虫類が産卵した可能性があるという考えを示している。別の説明として同時掲載のNews & Views論文で示されているのは、この卵は恐竜が産んだというものだ。この仮説が提起されたのは、この化石卵の推定重量が鳥類と非鳥類型恐竜の最も大きな卵の重量に近く、鳥類と非鳥類型恐竜の両方の化石が南極大陸で見つかっているからだ。
doi:10.1038/s41586-020-2412-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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