惑星科学:冥王星のホットスタートの可能性
Nature Geoscience
2020年6月23日
冥王星は、形成されたときは高温であり、惑星進化の初期には表面下に液体の海があった可能性があることを示した論文が、Nature Geoscience 掲載される。
これまでの冥王星の解析から、冥王星は、遠方のカイパーベルト内で形成されたときには低温で、氷に覆われていたと推測されている。厚い氷の殻の下に存在すると考えられている液体の海は、冥王星の岩石質の核の中で放射性元素の崩壊によって加熱された結果として、ずっと後期になってから発達したとされてきた。
今回、Carver Biersonたちの研究チームは、冥王星内部の進化についての熱的モデルシミュレーションを、NASAの探査機ニューホライズンズによる地質学的観測結果と比較した。その結果、低温形成のシナリオでは、冥王星の氷の殻内で生成される圧縮応力が、ニューホライズンズによって冥王星表面で観測された構造と矛盾することが明らかになった。一方、初期に表面下に海があるとする高温形成のシナリオでは、冥王星の殻の中で発生する応力が、冥王星表面で観測された伸長構造と一致していた。Biersonたちはさらに、冥王星が短期間で形成されたのであれば、「ホットスタート」のシナリオが可能だったかもしれないとの見方を示している。
これらの知見は、カイパーベルト内にある冥王星をはじめとする大きな準惑星が、形成時には高温で、表面下に海を持っていた可能性を示唆している。Biersonたちは、これらの海とその下にある岩石物質との間の長期にわたる化学的相互作用が、こうした遠方の氷の世界における海洋の化学的性質と居住可能性に影響するかもしれないとの考えを示している。/p>
doi:10.1038/s41561-020-0595-0
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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