環境科学:ヨーロッパにおける森林伐採の急増を示唆する人工衛星観測データ
Nature
2020年7月2日
2011~2015年と比較して、2016~2018年にヨーロッパで伐採された森林の面積が49%増加し、森林バイオマスの減少規模が69%増加したことを報告する論文が、Nature に掲載される。森林減少が拡大すると、2020年以降の森林による気候変動緩和という欧州連合(EU)の構想の実現が妨げられる可能性がある。
EUでは、森林が全陸地面積の約38%を占めている。現在、EU全体の温室効果ガス排出量の約10%が、炭素吸収源の役割を果たす森林によって相殺されている。森林伐採の増加は、木材需要とそうした重要な生態系サービスの保全の必要性とのバランスを維持する上で1つの課題となる。
今回、Guido Ceccheriniたちの研究チームは、詳細な人工衛星観測データを用いて、EU加盟26カ国における2004~2018年の森林伐採面積と森林被覆の変化を評価した。その結果、伐採強度は、2004~2015年は大部分のヨーロッパ諸国で安定していたが、2016~2018年に突如上昇し、特にバイオエネルギー部門や製紙業など森林関連の経済活動を行っている国で顕著な上昇が観測された。2016~2018年の森林伐採面積の増加に占める割合が最も大きかったのがスウェーデンとフィンランドで、両国を合わせると、26カ国で記録された森林伐採面積の増加量の合計の50%を超えていた。また、ポーランド、スペイン、フランス、ラトビア、ポルトガル、エストニアを合わせると、全体の約30%に達した。
今回の分析では、人工衛星観測データが、広範な地理的領域における森林伐採のタイムリーかつ一貫したモニタリングをもたらして、森林の持続可能な管理を支援する有用なツールとなり得ることが示唆された。Ceccheriniたちは、EUにおける森林伐採の増加に伴う二酸化炭素の影響が、2020年以降のEU各国の気候目標で十分に考慮される必要があると考えている。
doi:10.1038/s41586-020-2438-y
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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