環境:最近の数十年間に増加したヨーロッパの洪水
Nature
2020年7月23日
過去500年間のヨーロッパにおける洪水事象の分析が行われ、ここ30年間がヨーロッパで最も洪水の多い期間だったことを報告する論文が、Nature に掲載される。この論文では、この30年間が、洪水に関連する季節性、被災域、気温の点で過去の洪水事象と異なることが示唆されている。この知見は、洪水リスクの評価と管理戦略の向上に役立つ可能性がある。
ヨーロッパでは、ここ数十年間に洪水による多額の経済的損失が生じており、以前の研究では、ヨーロッパの一部地域で洪水事象が増加していることが示されている。しかし、現在の傾向は、通常より洪水の発生頻度が高く、規模が大きいと言えるのか、過去の洪水の多かった期間と異なるのかどうかといった点は解明されていない。
今回、Gunter Bloschlたちの研究チームは、歴史的記録(法定記録、新聞、公的・私的な通信文書)を用いて、1500~2016年にヨーロッパ全土の103の河川で発生した9576件の洪水事象のデータベースを構築し、ヨーロッパの歴史上、一定の時間間隔で洪水が多くなった9つの期間を特定した。これまでに洪水が多かった期間は、その前後の各年よりも低温になる傾向があったが、季節的洪水のリスクは変化しなかった。ところが、今回の研究で直近の洪水の多い時期である1990~2016年を分析したところ、この期間中の気温が、その前後の各年よりもおよそ摂氏1.4度高かったことが分かった。また、この期間中の季節的洪水のリスクが、特に夏季に上昇したことも明らかになった。
Bloschlたちは、データが2016年までしかないものの、その後も洪水の多い時期が続いていた可能性があると指摘し、こうした変化を説明できる洪水リスク管理・評価ツールの必要性を明確に示している。
doi:10.1038/s41586-020-2478-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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