気候変動:世界のGDPの最大20%に匹敵する資産が沿岸洪水の被害を受ける恐れがある
Scientific Reports
2020年7月31日
沿岸域での洪水事象は、2100年までに世界の国内総生産(GDP)の最大20%に匹敵する資産に被害を及ぼす恐れのあることを示唆する論文が、Scientific Reports に掲載される。今回の研究で、洪水被害が最も大きくなることが予想されている地域は、北西ヨーロッパ、東南アジア、東アジア、米国北東部、オーストラリア北部である。
今回、Ebru Kirezciたちの研究グループは、極端な暴風雨が発生しているときの世界の海水準に関するデータを、さまざまな温室効果ガス排出シナリオ下での海水準上昇の予測と組み合わせた。Kirezciたちは、これらのデータを用いて、2100年までに起こり得る海水準上昇の最大値をモデル化し、このモデルと地形データを組み合わせて、沿岸洪水のリスクがある地域を特定した。そして、世界の人口分布データと沿岸洪水のリスクがある地域のGDPに関するデータを用いて、洪水のリスクにさらされている人口と資産を推定した。
Kirezciたちは、温室効果ガス排出量が多く、洪水対策が実施されていないと仮定して、沿岸洪水の影響を受ける陸地面積が2100年までに48%増加する可能性があると推定している。そしてKirezciたちは、大規模な洪水のリスクがあると考えられる地域として、中国南東部、オーストラリアのノーザンテリトリー、バングラデシュ、インドの西ベンガル州とグジャラート州、米国のノースカロライナ州とバージニア州とメリーランド州、英国、北フランス、北ドイツを含む北西ヨーロッパを挙げている。Kirezciたちは、世界で沿岸洪水の影響を受ける人口が2100年までに最大2億8700万人(世界人口の4.1%)に達する可能性があり、洪水被害を受ける恐れのある資産の価値は最大14兆2000億ドル(約1560兆円、世界のGDPの20%)に達する可能性を示している。
今回の知見から、洪水対策への投資や温室効果ガス排出量の削減がなければ、沿岸洪水が21世紀末までに世界の人口と経済に大きな影響を与える可能性があることが示された。
doi:10.1038/s41598-020-67736-6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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