人間行動学:バイオリン奏者が人間のネットワークの同調性に手掛かりをもたらす
Nature Communications
2020年8月12日
複雑なネットワークを構成する人々の同調について、バイオリン奏者が参加した一連の実験結果を報告する論文が、Nature Communications に掲載される。この研究から、バイオリン奏者が同調性を維持するためにいろいろな戦略を用いることが判明し、同調を記述するために用いられている現行のモデルが人間に適用できないことが示唆された。今回の知見は、交通管理、感染症のエピデミック(地域的流行)の管理、株式市場の動態の研究などの分野にも影響を与える可能性がある。
これまでの研究では、小規模な人の集団における同調が調べられてきたが、こうした実験では、ネットワークの動態を支配するパラメーターの制御が不十分だった。
今回、Moti Fridmanたちの研究チームは、ネットワークを構成するプロのバイオリン奏者間の関係を制御することで、奏者の間の同調を調べた。Fridmanたちは、16人のバイオリン奏者に1つの音楽フレーズを繰り返し演奏させた。それぞれのバイオリンからの出力が集められ、各奏者への入力は、ノイズキャンセリングヘッドホンを介して制御された。それぞれのバイオリン奏者からは、他の奏者が見えなかった。一連の実験の中で、Fridmanたちは、バイオリン奏者が自分のバイオリンの音を聴いてから他の奏者のバイオリンの音を聴くまでに遅れが生じるように調節し、バイオリン奏者の組み合わせと遅れの長さを変えながら同様の試験を繰り返した。その結果、バイオリン奏者は、テンポを3倍まで変化させて、他の奏者と同調できることが分かった。また、個々の奏者は、フラストレーションのたまるシグナル(例えば、同じグループにテンポの合っていない演奏者がいるなど)を無視して、安定した同調を実現できることも明らかになった。このようにネットワークの構造と関係の変化に適応する能力は、以前のモデルでは予測されていなかった、同調性を実現するための新たな戦略を生み出す可能性があると考えられる。
doi:10.1038/s41467-020-17540-7
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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