遺伝学:ヒトは恋愛関係のダイナミクスに関連する遺伝子を持っているかもしれない
Scientific Reports
2020年8月21日
ヒト以外の動物の愛着行動に関与するCD38遺伝子の多様性が、ヒトの日常生活における恋愛関係のダイナミクスに関連している可能性があることを報告する論文が、Scientific Reports に掲載される。
今回、Jennifer Bartz、Gentina Sadikajたちの研究チームは、親密な関係にある男女111組(計222人)に対し、20日間にわたって、本人たちの社会的行動(他者とほほ笑み合ったり笑い合ったりすること、皮肉なコメントをすること、他者に何かを頼んだり、譲歩したりすることなど)、パートナーの行動の知覚、パートナーとの交流時の感情について自己申告してもらいそのデータを調べた。222人中118人(女性65人、男性53人)からは、遺伝情報も得た。
今回の研究から、CD38遺伝子のSNP(一塩基多型)であるCD38.rs3796863が、恋愛パートナーとの日常的な相互作用における伝達行動(愛情表現など)に関連していることが明らかになった。CD38.rs3796863には、AとCの2種類のバリアント(対立遺伝子)がある。そのためCD38遺伝子は、AA、CC、ACの3つの組み合わせ、つまり遺伝型が存在する。Bartzたちは、CC型の参加者が、AA型やAC型の参加者よりも伝達行動が活発なことを明らかにした。CC型の参加者は、AA型やAC型の参加者よりもパートナーの伝達行動が活発だと感じており、否定的な感情(心配、欲求不満、怒りなど)を持つことが少なかった。また、CC型の参加者は、パートナーとの関係の調整(関係の質や支援の知覚など)がより高いレベルで行われたと自己申告した。
今回の研究に参加したカップルには、1つのパターンが認められた。参加者自身の行動、パートナーの行動の知覚、否定的な感情と関係調整の経験が、参加者自身の遺伝型ともパートナーの遺伝型とも同じように関連していたのだ。
以上の知見は、CD38遺伝子の多様性が、ヒトとヒトの絆を支える行動や知覚において重要な役割を果たしている可能性を示唆している。
doi:10.1038/s41598-020-69520-y
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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