生態学:干ばつ期に繁殖活動を減らす鳴禽類
Nature Climate Change
2020年8月25日
ベネズエラとマレーシアに生息する熱帯性鳴禽類は、干ばつ期に繁殖活動を減らし、そうした繁殖活動の減少は平均長期生存率の高い種ほど大きいことを報告する論文が、Nature Climate Change に掲載される。この知見から、寿命の長い種は、ストレスの多い気候事象が発生している時に繁殖活動を減らすことで、影響を軽減できる可能性があることが示唆された。
気候変動性(干ばつの頻度と強度を含む)は、今後の温暖化とともに激化すると予測されている。一般に寿命の長い種ほど繁殖率が低いため、気候変動による個体の死滅から立ち直る能力が低い。ところが、生存と繁殖はトレードオフの関係にあり、過酷な事象が発生している時に繁殖活動を減らすことは、成体の生存を高める方法となる可能性がある。
今回、Thomas MartinとJames Moutonは、新世界と旧世界に生息する生活史の異なる熱帯性鳴禽類(長命種と短命種)が、繁殖活動を減らすことで死を回避しているかを調べた。今回の研究では、ベネズエラとマレーシアで38種の鳥類(ハイムネモリミソサザイ、エンビシキチョウなど)を対象とした野外個体数調査が複数年にわたって実施され、この調査対象期間中に、それぞれの調査地点で干ばつの年が1度あった。Martinたちは、3つの異なる気候変動シナリオの下での将来の個体数動態をモデル化した。
その結果、干ばつ期には、マレーシアに生息する20種で平均36%、ベネズエラに生息する18種で平均52%、繁殖活動が減ったことが判明した。繁殖活動を減らした長命種の大部分で、生存率が干ばつのない年より上昇したが、繁殖活動を減らさなかった種、繁殖活動をあまり減らさなかった種、多雨な生息地に大きく依存している種は、生存率が低下した。また、気候変動下では、モデル化された個体数増加に対する干ばつの負の影響は、長命種の方が短命種よりも小さかった。このことは、長命種が、気候変動下の環境変動性を生き延びるために繁殖行動を調整できる可能性を示している。
関連するNews & Viewsでは、Gonçalo Ferrazが、今回の研究によって種の脆弱性が特定され、保全管理にとって貴重な情報がもたらされたと指摘しているが、「それでも、生息地として利用可能な環境が種の生存にとって極めて重要なことは変わらない」と述べている。
doi:10.1038/s41558-020-0864-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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