神経科学:血液の置換によってマウスの脳卒中の症状を軽減する
Nature Communications
2020年8月26日
脳卒中のマウスモデルの血液を健康なドナーマウスから採取した全血に置換すると、脳卒中の症状が軽減されることを報告する論文が、今週、Nature Communications に掲載される。この発見は、脳卒中の治療法の開発につながる可能性がある。
脳卒中は、血液脳関門の崩壊や全身反応を引き起こすことがある。今回、Xuefang Renたちの研究チームは、計333匹の雄マウスを用いた一連の実験において、血液置換療法が脳卒中の全身反応を軽減することを示し、この結果が、血液置換による、マトリックスメタロプロテアーゼ-9(MMP-9)タンパク質濃度の低下によってもたらされた可能性のあることを明らかにした。
マウス(とヒト)が脳卒中を発症すると、発症直後の数時間は、MMP-9の血中濃度が上昇することが知られている。Renたちは、脳卒中発症後約6.5~7時間のマウスに血液置換療法を実施したところ、梗塞部(血液供給の不足によって壊死した脳組織の領域)の体積が減少し、神経障害が改善したことを確認した。また、血液置換療法の結果、マウスの血中のMMP-9濃度が低下し、炎症に関連するタンパク質と免疫細胞も減った。これに対し、健康なドナーマウスから採取した血液にMMP-9を人為的に添加してから脳卒中のマウスに輸血すると、脳卒中の症状は改善されなかった。
以上の知見をまとめると、脳卒中を発症したマウスに血液置換療法を実施すると、血中と脳内のMMP-9の濃度が低下して、炎症のレベルが軽減されることが示唆された。
doi:10.1038/s41467-020-17930-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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