Research Press Release

環境:再生可能エネルギー生産に用いる金属材料の採掘が生物多様性への脅威を助長するかもしれない

Nature Communications

2020年9月2日

再生可能エネルギーの生産に使用される材料を目的とする鉱山が増えるにつれて、生物多様性への脅威が将来的に増加する可能性があることを示唆する論文が、Nature Communications に掲載される。

再生可能エネルギーの生産は、気候変動を緩和するために必要だ。しかし、現在の世界のエネルギー消費量に占める再生可能エネルギーの割合は17%にすぎない。再生可能エネルギーの生産に必要な技術とインフラの創出は、多くの金属の増産につながり、生物多様性への脅威を生じさせる可能性がある。

今回、Laura Sonterたちの研究チームは、全世界の鉱区のマップを作成し、これらと生物多様性保全地域との一致性を評価した。その結果、鉱業が、地球の陸地面積のうちの約5000万平方キロメートルに影響を及ぼしている可能性があり、鉱区の82%が再生可能エネルギー生産に使用される材料の採掘を目的としていることが明らかになった。鉱区と保全地域の空間的重複に関しては、鉱区の8%と国の指定した保護地域、鉱区の7%と主要生物多様性地域、鉱区の16%と残存原生地域(生物多様性の減少を阻止する上で重要な優先課題と考えられている地域)が重複していることが分かった。

Sonterたちは、今後操業する予定の鉱山の約84%が再生可能エネルギー生産に必要な材料を目的としており、操業中の鉱山の場合(約73%)よりも割合が大きいことを見いだした。また、再生可能エネルギー生産に必要な材料を目的とする操業予定の鉱山は、他の材料を目的とする操業予定の鉱山よりも密集しているように見えた。

Sonterたちは、鉱区の規模と密度が増加すると、生物多様性への脅威が助長されると考えており、戦略的計画がない場合には、こうした生物多様性への新たな脅威が、気候変動緩和によって回避された脅威を上回る可能性があると主張している。

doi:10.1038/s41467-020-17928-5

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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