動物行動学:若いゾウを導く役目に適任なのは高齢の雄ゾウ
Scientific Reports
2020年9月4日
高齢の雄ゾウは、未知の環境や危険な環境を移動する際に、若齢の雄ゾウにとっての経験豊かなリーダーとして重要な役割を果たしているという考えを示した論文が、今週、Scientific Reports に掲載される。
ゾウやクジラのように寿命の長い種の場合、高齢の個体は、複雑で変化する環境に適切に対応できることが多く、同じ群れの若齢個体の役に立つと考えられる。ところが、この分野の研究は、雌を対象としたものがこれまで多かった。
今回、Connie Allenらの研究チームは、ボツワナのマカディカディ塩湖国立公園(MPNP)内のゾウの通り道に沿って移動してボテティ川に出入りする1264頭の雄のアフリカゾウの群れ行動とリーダーシップのパターンを調査した。
Allenたちは、ゾウの通り道で目撃されたゾウの20.8%(263頭)が単体で行動しており、青年期の雄ゾウが単体で移動する頻度は予想を著しく下回った一方、成熟した雄の成体が単体で移動する確率は予想以上だったことを明らかにした。これは、新たに独立し、経験の浅い若齢のゾウにとって、単体で移動することのリスクが高いことを示唆するものと考えられる。高齢の成体は、雄の群れの先頭に立って移動する確率が有意に高く、このことからは、成熟した成体の雄ゾウが、生態学的知識の「宝庫」として機能し、雄のアフリカゾウの群れの集団移動において重要なリーダーになっていると考えられることが示唆された。
Allenたちは、高齢の雄ゾウが繁殖の観点から余剰と考えられていることが、高齢の雄ゾウのトロフィー狩猟の合法性を裏付ける論拠として一般的に用いられているとし、そのような高齢の雄ゾウの選択的捕獲は、雄ゾウの社会全体と世代間の生態学的知識のフローを混乱させる恐れがあるという考えを示している。
doi:10.1038/s41598-020-70682-y
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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