環境:小さな島国にとって海洋プラスチックごみの除去は多大な費用負担になる
Scientific Reports
2020年9月11日
ユネスコ世界遺産であるアルダブラ環礁(セイシェル諸島のサンゴ礁でできた環状の島々)からプラスチックごみを全て除去するには、468万ドル(約5億1500万円)の費用と1万8000時間の作業を要することを明らかにした論文が、Scientific Reports に掲載される。この知見は、小島嶼国が負担する海洋プラスチックごみの経済的コストを明確に示している。
アルダブラ環礁は、大きな礁湖を取り囲む4つの大きな島で構成され、サンゴ礁、マングローブ、藻場からなる相互に結び付いた海洋生態系を支えている。アルダブラ環礁には、最後に残ったアルダブラゾウガメ(Aldabrachelys gigantea)の個体群や、アオウミガメ(Chelonia mydas)などの固有種も生息している。今回、April Burt、Jeremy Raguainたちの研究チームは、2019年にセイシェル諸島財団がアルダブラ環礁の最大の島であるグランテール島の南海岸で5週間にわたって実施した清掃活動に要した費用と労力に関するデータを使用して、アルダブラ環礁の沿岸地域からプラスチックごみを除去するための総費用を推定した。2019年の清掃活動では、グランテール島から25.7トンのプラスチックごみが除去され、そのうち60%は網や縄などの漁具、24%はプラスチック製の靴(ほとんどがビーチサンダル)だった。この清掃には、22万4538ドル(約2470万円)の費用がかかり、5週間で12人のボランティアが980時間を費やした。
Burtたちは、グランテール島の20地点で実施された調査に基づき、アルダブラ環礁の沿岸地域に滞留するごみの総量を513トンと推定した。Burtたちの推定によれば、513トンのごみを収集して除去するには1万8000時間の作業が必要で、費用は468万ドルに上る。
Burtたちは、今回の知見から、海洋生態系と沿岸生態系を保護するには、国際的な資金提供機関が小島嶼国による清掃活動を財政支援すべきであることが明らかになったと考えている。
doi:10.1038/s41598-020-71444-6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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